法制執務(立法技術)とは何か(その1)

1 法制執務と立法技術

(1) 法制執務
 「法制執務」の語は、法律とこれによって成り立つ制度(法制度)などを意味する「法制」と事務を執ることを意味する「執務」との複合語ですから、文字どおりには、法律及び法制度に関する事務を行うことを意味しますが、実務上は、もう少し限定的な意味を有する語として用いられています。

 実務上、「法制執務」とは、一般には、法令の立案及び審査に関する事務又はその事務を行うことをいい(狭義)、広義では、法やその制度(法制)に関して、立案、審査、解釈及び調査等を行う事務全般又はその事務を行うこといいます。

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法律家の文章(その4)

② 「当該各号」
 「当該各号」という表現は、定義規定や施行期日を各号列記の形式で規定する場合などにおいて、「当該各号」の前にある「次の各号」を受けて、「当該各号に定めるところによる。」、「当該各号に定める日から施行する。」などの形で用いられます。
 定義規定を各号列記の形式で定める場合の例は、次のとおりです。

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法律家の文章(その3)

4 「当該」について

(1) 当該の意味と用法

 「当該」は、国語辞典(大辞林)によれば、「当の」、「それにあたる」などの意で、連体詞的に用いる語であるとされています。
 「当該」は、品詞としては、名詞ですが、連体詞的に用いる語ですので、「当該」の語が単独で用いられることはなく、必ず「当該○○」などのように、「当該」の後にある名詞を修飾する語として用いられます。なお、有斐閣「法律用語辞典第4版」によれば、法律用語としての「当該」は、「連体詞「その」とほぼ同義。そこで問題になっている当の」という意味であると説明されています。

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法律家の文章(その2)

3. 「係る」について

(1) 法令において「係る」が多用される理由

 「係る」は、日常用語として、全く用いられないというわけではありませんが、主として法令や公文書などに用いられる表現で、特に、法令においては 、多用されている用語です。国語辞典(広辞苑)によれば、「係る」は、「かかわる、関係する」の意であるとされています(広辞苑)。

 「係る」は、硬い印象を与える言葉であるため、多くの地方自治体などが公表している「お役所言葉改善の手引」などの資料においては、言い換えるべき言葉の一つとして取り上げられています(杉並区役所区長室総務課編「外来語・役所ことば言い換え帳」(ぎょうせい刊)160頁)。なお、同書では、「係る」の言い換え例として、「~に関する」、「~についての」を挙げています。

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法律家の文章(その1)

1. 法律家の文章に難解な用語が使用される背景

 法律家の文章を読んで感ずるのは、日常用語としては使われないような難解な用語が使用されることが多いということです。もちろん、法律の世界には、独特の専門用語があり、必要な場合には、難解なものであっても専門用語を用いなければならないことは当然ですが、ここで取り上げるのは、それ以外の用語についてです。この記事では、このような用語の代表例として、「かかる」(このようななどの意)、「係る」(~に関係があるなどの意)、「当該」(それに当たる、そのなどの意)の3語を取り上げ、他の用語に言い換えることが可能か、他の用語に言い換えるのが適切であるかなどについて考えてみたいと思います。

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