法令のトリビア(1)―現行法令の数(その2)

3 法令集によって異なる現行法令の数

 前記の法令データ提供システムは、総務省行政管理局が編纂したものですが、現行法規を網羅的に登載する民間の法令集である、衆議院法制局、参議院法制局共編「現行法規総覧」(第一法規出版・ウェブ版)では、平成28年11月29日までに公布された法令の数は、次のとおりとされています。

日本国憲法 1件
法律 2512件
政令 3501件
勅令 180件
省令 5339件
規則 816件

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法令のトリビア(1)―現行法令の数(その1)

「法令のトリビア」では、法令に関する細かな雑学的知識(トリビア)を紹介します。

 我が国は、成文法国ですから、法は、基本的に成文の法令の形式で存在していますが、現在の法秩序を形成している現行法令の数がどの程度であるかについては、あまり知られていません(山本康幸氏(元内閣法制局長官、現最高裁判所判事)は、「実務立法技術」(株式会社商事法務刊)のはしがきにおいて、法科大学院の学生に対して、我が国の現行法律の数を尋ねたところ、皆の答えが、実際の数値とかなりかけ離れたものであったというエピソードを紹介し、立法の知識の初歩的なものも世間一般にはあまり知られていないことを指摘しています。)。
 そこで、本稿では、現行法令の数やその数え方などを紹介します。

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法制執務(立法技術)とは何か(その4)

2 法制執務(立法技術)の伝統と変化

(2) 法令の改正における新旧対照表方式の登場
ア 伝統的な改正の方式
 我が国における法令の改正は、これまで「改め文方式」(「改める文方式」ともいいます。)によってきました。
 「改め文方式」とは、「第○条中、「A」を「B」に改める。」、「第○条中、「C」の下に「D」を加える。」、「第○条中、「E」を削る。」、「第○項を第△項とする。」など、改正の対象とする字句や条項を特定して改正内容を文章で逐次記述する方式をいいます。

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法制執務(立法技術)とは何か(その3)

2 法制執務(立法技術)の伝統と変化

(1) 実務慣行とその変化
法制執務上のルール又は立法技術については、その一部について、「法令における漢字使用について」(平成22年11月30日内閣法制局長官決定)のような成文のものもありますが、そのほとんどは明治時代以降の長年の立法の伝統の下で、確立された膨大な先例及び慣行を体系化したものであり、実務慣行の中で形成された事実上のルールです。そのため、これが改められる場合にも、通常は、法令の改正のように成文の形で改正が明らかにされることはなく、あくまでも実務の積み重ねの中で新たな慣行が形成されていくにすぎません。したがって、特定の時期において確立していると見られるルールも、時代の要請や法令の在り方に対する考え方の変化などにより、変化する可能性があることに留意する必要があります。

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法制執務(立法技術)とは何か(その2)

(3) 立法技術
法制執務に密接に関連する概念として、「立法技術」があります。
「立法技術」とは、一般に、法令を立案するために必要となる知識や技術の全般(集合体)をいいます、立法技術は、法令の制定の目的や趣旨を言語的に正確かつ適切に表現するための技術であり(有斐閣「新法律学辞典第3版」) 、法令の内容並びに形式及び表現に関する法制執務上のルールや考え方に関する知識とこれを応用するための技術がその中核を占めます。そのため、「立法技術」は、法制執務と同義のものとして用いられることがあります。
 法律実務家が各種の法律文書等を作成する上で役に立つのは、法制執務の立法技術的な側面ですので、本連載においても、立法技術に重点をおいて記述します。

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