法令のトリビア(3)―官報と法令全書(その1)

 今回は、法令の公布など、国の作用に関し極めて重要な役割を担っている官報とこれをまとめた月刊誌である法令全書を取り上げます。

1 官報は国の機関紙

 官報は、法律、政令、条約、国の機関としての報告、法令の規定に基づく各種公告等を掲載する国の機関紙です。国や特殊法人等の報告や様々な資料も官報で公表されますので、国の広報紙としての役割も果たしています。また、裁判所の除権決定、破産・再生・会社更生関係の各種公告、会社の合併公告、決算公告なども掲載されますので、公的な公告紙としての役割も担っています。 

 官報は、明治16年太政官文書局により創刊され、内閣印刷局大蔵省印刷局財務省印刷局などによる刊行を経て、平成15年4月以降は、独立行政法人国立印刷局が発行所となっています。官報及び法令全書に関する内閣府令第1条によると、官報には、憲法改正詔書、法律、政令、条約、内閣官房令、内閣府令、省令、規則、庁令、訓令、告示、国会事項、裁判所事項、人事異動、叙位・叙勲、褒賞、皇室事項、官庁報告、資料、地方自治事項及び公告等を掲載するものとされています。

2 法令の原典としての官報

 法令は、官報への掲載によって公布され 、これにより初めて対外的な効力、すなわち、国民に対する拘束力を持つに至ります(最大判昭和32年12月28日刑集12巻14号3313頁)。したがって、法令を公式に公示するものは、公布時の官報であり、官報以外に、公式に法令を公示するもの存在しません。その意味で、法令の原典は、官報であるということができます。一般の法令集は、全て官報を原典として編集されたものです。

 多くの法令は、六法全書その他の法令集に収録されていますので、法令集を見れば、法令の内容を知ることができますが、既存の法令の一部を改正する法令の場合、法令集は、一部改正法令の内容を改正の対象とする法令に溶け込ませたものを収録しているため、一部改正法令自体は登載されないのが普通です。そのため、一部改正法令の内容そのものを知りたい場合には、その公布時の官報かその内容を収録した資料を調査する必要があります。また、一部改正法令の附則についても、多くの法令集では、紙幅の関係から、その一部しか登載していないのが普通です(抄録)が、その公布時の官報を調査することにより、附則に規定されている経過措置の詳細等を知ることができます。

 なお、官報で公布された法令の内容に誤植その他の理由により表記の誤りが生じた場合には、官報正誤欄で訂正の手続が採られます。ただし、その誤りが法令の実質的な内容にわたるときは、法令の改正の手続を採らなければならないこととされており、その限界が問題とされることがあります。

3 官報の発行とインターネット版官報

 官報は、行政機関の休日を除く毎日発行され、発行日の午前8時30分に、国立印刷局及び東京都官報販売所に掲示され、都道府県庁所在地にある官報販売所で販売されます。そのため、法令の公布の時刻については、上記の官報掲示時刻である午前8時30分が公布の時刻であるとされています。

 また、上記の掲示・販売と併せて、インターネット上でもその内容が公開され、インターネット版『官報』として、発行日から過去30日間分の官報(本紙、号外、政府調達等)が独立行政法人国立印刷局から配信されています。さらに、官報をインターネットで検索できる有料の会員制サービスとして、「官報情報検索サービス」があります。官報情報検索サービスの利用者(会員)は、昭和22年5月3日以降の官報について、イメージ表示及びテキスト表示による閲覧並びに発行の日付による検索及びキーワードによる検索が可能となっていますので、法令等の原典の調査・検索には極めて便利です。筆者も、最近は、専らインターネット版官報を法令検索に利用しています。

(続く)
[弁護士 柳田幸三]