法令のトリビア(4)―法令番号(その1)

1 法令番号とは何か

 法令番号は、法令を特定するために公布時に付される番号です。法令には、法令の種類及びその制定権者の別に応じて、暦年ごとに第1号から始まる連続番号が付されます。法令の形式に応じて、法律の場合は法律番号、政令の場合は政令番号と呼ばれ、府省令の場合は、当該官庁の名称に応じて、府令番号又は省令番号と呼ばれます。なお、暦年の中途で改元がされた場合には、その時点から新たに第1号から始まる番号が付されます。

 
 法令番号の具体例を平成29年6月2日に公布された「民法の一部を改正する法律」を例に示すと、次のとおりです(同日付けの官報号外第116号。原文は、縦書き)。

 民法の一部を改正する法律をここに公布する。

  御 名  御 璽

    平成二十九年六月二日

内閣総理大臣 安倍 晋三       

法律第四十四号

   民法の一部を改正する法律

 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

(以下省略)

 

 上記の例では、公布文の次、題名の前に位置する「法律第四十四号」との記載が法令番号です。ただし、後述のように、法令番号は、法令番号は、暦年ごとに付されますので、法令番号は、一般には、番号単独ではなく、暦年(元号)と合わせて、「平成○○年法律第○○号」のように用いられるのが普通です。

 法令番号は、官報においては、上記のとおり、漢数字で表記されていますが、法令番号を横書きで表記する場合は、アラビア数字に置き換えて表記するのが一般的です(厳密には、法令番号に用いられる漢数字が、アラビア数字で置き換えることができない固有名詞的なものか、アラビア数字に置き換えて表記することができる序数詞的なものかという問題がありますが、各省庁において発出される横書きの各種通達などにおいて法令番号が横書きで表記されていることなどからしますと、後者であると理解されているものと考えられます。)。

 法令番号は、法令の題名より前に置かれ、法令を特定する機能を営むにすぎないものですので、法令の一部を成すものではありません。

 

2 法令番号を付する目的―法令の特定

 法令に法令番号を付する目的は、法令を特定することにあります。法令には、同一の題名の法律が多いため、題名だけでは特定できないことが多いのです。例えば、既存の法律の一部を改正する法律の場合、その法律の題名は、「○○法の一部を改正する法律」とされることが多く、複数回その法律が改正される場合には、同一の題名の法律が複数存在することになります。

 実例を挙げますと、人事院の給与勧告に基づく一般職の国家公務員の給与の改定は、「一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律」という題名の改正法によって行われますが、改定の都度、同名の法律が制定されることになります。

 また、新規に法令を制定する場合にも、既存の法律と同名の法律を制定することがあります。例えば、現行の民事訴訟法(平成8年法律第109号)は、平成8年に制定されたものですが、それまでに存在していた民事訴訟法(明治23年法律第29号)と同一の題名が付されました(なお、それまでの民事訴訟法は、新しい民事訴訟法の制定に伴い、内容が改正され、題名が、「公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」と変更されました。)。

 このような場合、題名だけでは、その法律を特定することができませんが、法令番号を併記することにより法令を特定することができます。なお、法令の特定という点では、同一の暦年に同一の法令番号を持った法令は一つしかありませんので、法令番号のみでも法令の特定は可能ですが、法令番号のみでは、法令の内容が不明ですので、題名と法令番号の両者で法令を特定するのが一般的な法令特定の方法になっています。

(続く)
[弁護士 柳田幸三]