法令のトリビア(3)―官報と法令全書(その2)

4 官報の本紙と号外

 官報には、本紙、号外、特別号外と特別調達公告版があります。ここにいう本紙と号外は、通常の新聞、雑誌等の本紙(本誌)、号外とは意味が異なります。すなわち、本紙は、毎号32頁の構成で発行されます。これに対し、号外は、掲載事項が本紙の範囲に収まらないものを掲載するもので、通常の日刊紙の号外のような、緊急の速報としての意味はありません。

 
 したがって、本紙と号外で掲載事項に相違があるわけではありませんが、平成17年7月26日に公布された会社法(平成17年法律第86号)、平成29年6月2日に公布された民法(債権関係)の改正を内容とする「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」など、分量の大きな法令は、本紙には32頁という頁数の制約があることから、号外に掲載されることが多いようです。
 特別号外は、 国会の召集、法令を緊急に公布する必要のある場合等緊急を要する場合に発行される関係で、休刊日にも発行されることがあります。

5 法令全書

 法令全書は、官報に掲載された事項のうち、憲法改正詔書、法律、政令、条約、内閣官房令、内閣府令、省令、規則、庁令、訓令及び告示等を、法律、政令等の種類ごとにまとめて編集、収録した月刊の定期刊行物で、現在(平成15年4月以降)は、官報と同じく、独立行政法人国立印刷局が発行機関となっています。

 法令全書は、明治18年太政官文書局により創刊され、その後,慶応3年 10月15日以降明治17年末までの分が遡って編集され、現在に至っています。法令全書は、官報に掲載された内容を編集して収録したものですので、その掲載には、官報に認められる法令の公布のような特別の法律的効果は認められません。

 法令全書には、「月号」と「総目録」があります。「月号」は、官報に掲載された上記の集録事項を月ごとにまとめたものであり、官報の毎発行月の翌月25日に発行されています。「月号」には、官報の掲載事項のうち、上記の集録事項以外のものは掲載されておらず、法律、政令等の種類ごとに分類されて集録されているため、法令等の調査、検索には、官報そのものより見やすく、便利です。

 「総目録」は、1年間に官報で公布された法令の件名を集録し、その法令の五十音別の索引を掲載したもので、官報の発行年の翌年3月に発行されています。総目録は、官報の掲載内容を調べる目録又は索引として有用です。

 なお、明治45年7月までの法令全書については、これを撮影した画像が国立国会図書館国立国会図書館デジタルコレクションとして公開されています。また、明治、大正、昭和の各年間に発行された法令全書の復刻版が「明治年間法令全書」、「大正年間法令全書」、「昭和年間法令全書」として株式会社原書房から出版されています(昭和年間法令全書は、現在、昭和28年までのものが刊行されています。)。

(完)
[弁護士 柳田幸三]