株式報酬制度 – 第一回 有償ストックオプション

企業会計基準委員会は、平成29年5月10日、「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」等(実務対応報告公開草案第52号)を公開し、現在、これについてパブリックコメントの手続が行われている(コメントの期限は平成29年7月10日まで)。
 この実務対応報告(以下「本実務対応報告」という。)は、企業がその従業員等に対して権利確定条件が付されている新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引(「権利確定条件付き有償新株予約権」)についての会計処理及び開示を明らかにすることを目的とするものである。
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2017/2017-0510.html

  有償ストック・オプションについては、基本的に労働サービスを対価とする報酬の支払ではないため、これまで、労働サービスの人件費として計上する必要がないものとして取り扱われてきた。有償ストック・オプションの発行は近年増加傾向にあったが、人件費を費用計上する必要がないという点が、実務的には大きなメリットであった。しかし、本実務対応報告によれば、本実務対応報告において示されている要件が充たされない場合、有償ストック・オプションの発行時に企業は人件費を費用計上する必要があることになり、有償ストック・オプションの実務に大きな影響が生じる可能性がある。

 本実務対応報告は、勤務条件及び業績条件が付されている有償新株予約権が従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価として用いられていないことを立証できる場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当しない、つまり労働サービスを人件費として計上する必要がないとしている。このことは、逆に言えば、企業は、有償ストック・オプションが「従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価として用いられていないこと」を立証しない限り、新株予約権を人件費として計上しなければならないことを意味する。これについては、どのような方法により上記の点を「立証」することができるのかなど、実務的にも不明確な点が多く、今後の企業会計基準委員会の審議及び実務上の取扱いが注目される。

[弁護士 川村一博]